スペインワイン BUDO YA

スペインにあるワイン専門店BUDO YAです。ワイナリー観光、クオリティワインのご紹介、ワイン関連の通訳・翻訳などを承っております。

ワイナリー訪問 D.O.カスティーリャ・イ・レオン

ボデガス・マルゴン

2014/06/15

D.O.ティエラ・デ・レオン。
レオン県のパハレス・デ・ロス・オテロスという村にワイナリーはあります。
標高は750~830メートル。遠くにピコス・デ・エウロパ山脈が見える、スペイン北部です。

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この地域でよく使用されるブドウは、レオン固有品種プリエト・ピクドとアルバリン。ボデガス・マルゴンでは、アイスワイン用のベルデホ以外、全てこの二種類からワインを作っています。写真のブドウはプリエト・ピクド。樹齢100年ほどのものだそうです。強くて冷たい北風から守り、極端に少ない雨量のため、地面に葉が覆い被さるようにして出来るだけ湿度を保てるようにした、スペイン語で「ラストラ」と呼ばれる昔ながらの植樹法です。

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しかし、約3メートル四方に1本の樹しか植えられず、古い樹齢ということもあり、生産性は極端に低く、1ヘクタールあたり1000キロしか収穫できないそうです。(例えばリベラ・デル・ドゥエロでは、ブドウの品質を守るため、1ヘクタールあたり7500キロまでの収穫という規定があります。) ブドウが地面について病気になりやすいのではないか?と質問すると、降雨量が極端に少なく、緯度と標高が高いため、寒くて乾燥しているので病気はほとんどないという答えでした。逆に夏は極端に暑くなるので、ゆっくり成長したブドウが短い期間で熟すそうです。

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ワイナリーが持っているレストランで、ボトル詰めされた全種類のワインを試飲しました。

どうして、写真がないかというと・・・

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このワイナリーの醸造責任者、ラウル・ペレス氏がレストランに現れ、一緒に食事をすることになったので、つい写真も撮らずに夢中で話を聞いてしまいました。ラウルによると、アルバリンはレオン固有品種と言われていますが、おそらくシェニン・ブランと同品種だろうということでした。

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ステンレスタンクを一切使わず、一次発酵から大樽を使います。温度管理のため、中に電熱板を入れていたときもあるそうですが、ここ数年はその必要を感じず、できるだけ人の手を加えず、ブドウの力を見極めながら時間をかけてマセラシオン(ブドウの皮や種から色とタンニン分を引き出す工程)を行っています。

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ロゼと白ワインもステンレスタンクではなく、大樽で一次発酵から行います。

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濾過する前なので濁りがあります。ボトルから飲んだものより、糖度も少し高めに感じました。樽から酸素が少しずつ入るため、発酵中、熟成中ともかき混ぜたりはしないそうです。

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プリエト・ピクドのロゼワインは、いちごやラズベリーのような甘めの華やかな香りが特徴です。味わいはフレッシュで軽やかな辛口。2日間のマセラシオンの後、プレスではなく、絞る方法で果汁をとっています。この後、7ヶ月間樽熟成させるタイプとしないタイプの2種類があり、どちらも5年後くらいはもっと繊細にもっとエレガントに美味しくなっているはずだそうです。ロゼワインは新しいうちが美味しいものだと思っていたので、意外でした。

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樽の中身を試飲して様子を見ているラウル氏。まさに子どもの成長を暖かく見守っているまなざしでした。最低限の成分分析だけを行い、後は、自分の目と鼻と口で確かめて決めるそうです。ラウル氏の考えでは、新樽は重すぎるワインを作り出すので、好きではないそうです。実際に同じ年の同じブドウで、新樽と3年使用した樽で熟成中のものを試飲させてもらいましたが、確かに新樽は野菜のような青臭さが鼻につき、酸味とタンニンがばらばらな感じがしたのに対し、3年めの樽ははるかに味わいのランスが良く、深みを感じました。

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穏やかに、わかりやすく説明してくれるラウル氏。一緒にいるこちらまで幸せになる笑顔で仕事を進めていきます。5年間、樽で熟成させている白ワインを試飲させてもらいましたが、深く深く広がる素晴らしい味わいでした。残念ながら、ラウル氏の理想を実現するために実験的に作られているだけで、市販はされていません。市販されている銘柄も5年くらい経ってからの方がずっと美味しくなるよ、とラウル氏が言うと、他の人が「ワイナリーの仕事はワインを売ることなんだ」と困っていました。

他にも市販されていないタイプのワインをいくつも樽で熟成中で、ひとつひとつ説明してくれながらとても楽しそうにしていました。

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コンサルタントにラウル氏の名前があるワイナリーはいくつもありますが、少なくとも2週間に1度はチェックしにやってきて、醸造責任者として働いているのは、自分のワイナリー以外ではこのボデガス・マルゴンとあと2つだけだそうです。プリエト・ピクドには、長期間かけて素晴らしい熟成を見せる高いポテンシャルを感じていて、具体的にはポルトガルのRobustus(Nieport)と同じコンセプトで良い物を作り上げていきたいそうです。

既に、ペニンガイドでアイスワインのアルデバランは95点、プリメウル94点、パーカーポイントでもプリエト・ピクドは92点、バルデムスは94点、エル・サントは93点と高い評価をとっていますが、今後も要注目ワイナリーであることに間違いなさそうです。

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ワイナリーの周囲は個人所有の地下熟成室がたくさんありました。長い間、たくさんの人がワインを作ってきた歴史のあるところです。ラウル氏のような人が素晴らしいワインを作ることによって、プリエト・ピクドの名前が世界的になる日も夢ではないのかもしれません。


-ワイナリー訪問, D.O.カスティーリャ・イ・レオン