スペインワイン BUDO YA

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絶滅危惧種の再生プロジェクト

2021/12/14

スペインには遺伝的多様性がある(固有品種が多い)ので、遺伝子改良による新品種の導入や、ワイン生産のために外国産のブドウを輸入する必要がありません。しかし品種によっては、収量が少ない、価格が安い、病虫害に弱く育てにくいなどの理由で他の品種へ植え替えられたり、そもそも気候や土壌に適応せず自然淘汰されていったりするものがあります。スペインの豊かな遺伝子保存の観点からも、ワインの典型性への貢献の観点からも、マイナーな固有品種の保存と普及のために、いくつかのDOや研究所で、少数品種の研究に積極的に取り組み、その起源を探っています。

カスティーリャ・イ・レオンでも、1990年代から研究が行われており、特に、過去には完熟が難しかった品種が、温暖化の進んだ現在では糖と酸の素晴らしいバランスを見せることなどに注目して、これらの絶滅危惧種を増やして新たなワインを作るという取り組みが進んでいます。

固有品種(Viariedad Autóctona)とは
交配、突然変異、選別などにより、特定の地域を起源とし、他の地域でも栽培されているが、現在もその地域で栽培されているもの(例:ベルデホ)

伝統品種(Variedad Tradicional)とは
起源であるかどうかを問わず、特定の地域で何世代にもわたって栽培されてきたもの。通常は地域に特化しているので、その文化的価値は高い(例:テンプラニーリョ)

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再生プロセス

1:品種のアイデンティティを調査する。
ブドウの成長期である初夏に、外観を調べ、マイナー品種である可能性を確認する。
遺伝子を調べ、同義語の品種が別の地域に存在しないことを確かめる。
ブドウ品種の同義語(シノニム)一覧

2:冬に切り取った枝を室内で栽培し、翌年、畑に植え替える。

3:3年目以降、生物季節学(発芽・開花・落葉など植物の活動周期と季節との関係を探る)や形態学(生物の器官や組織の肉眼的・可視的な特徴を探る)的研究を行い、ブドウを複製しても各特性の発現レベルが維持されていることを確認する。

4:栽培本数を増やし、単一品種のワインを醸造する。

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5:品種が安定していること、均一であることをスペイン品種庁に証明し、商業品種としてBOEで法的に承認され、スペインのブドウ商業品種登録簿に登録される。

7つの固有品種
登録された品種は、以下の通り。
Bruñal:2011年認定
Estaladiña:2015年認定
Gajo Arroba y Tinto Jeromo:2016年認定
Mandón:2017年認定
Puesta en Cruz:2019年認定
Bastardillo Chico y Negro Sauri:2019年認定
Rufete Serrano Blanco:2020年認定

 

注目の固有品種

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Legiruela(白ブドウ、グレドス山脈南斜面・アビラ県ペドロ・ベルナルド村)
昔は、干しぶどうにしてから、Ligerueloと呼ばれる甘口ワインを作っていたが、大半がオリーブに植え替えられ、絶滅の危機に瀕していた。Lanzahíta村のワイナリーがリードして2000株まで増やし、スティルワインを醸造。生育サイクルは短く、非常に高い酸が特徴。
"無限の可能性を秘めた未発見のダイヤモンドの原石"

 

Puesta en Cruz(白ブドウ、DOアリベスの多くの畑に散見される)
ポルトガルのRabigato種とシノニムで、アリベス地方で進化したもの。
3つの認定クローンがある。タイトで細長く円錐形、中~大きめの房。
酸が落ちにくく、樽熟成にも適している。
"酸は高いが、攻撃的でない。ボリューム感があるので、単一品種でワインを作ることが可能。長期熟成する。"

 

Verdejo Colorado(ピンク色のブドウ、DOアリベスのわずかな畑に散見される)
皮はピンク色で実は白く、香りが高い。房は小さく、一般的なベルデホに似ている。
白ワインのような薄い色のロゼワインを作れる。生育サイクルは短い~中くらい。
アリベスの新しい宝石のような品種になり得る。
"非常に魅力的で汎用性の高い品種"

 

Merenzao(黒ブドウ、DOビエルソ)
DOアリベスのBastardillo Chico、DOレオンのNegro Sauríとシノニム。
5つの認定クローンがある。
他の品種に比べ、デリケートで病害に弱く、栽培が難しい。完熟すれば非常に上品でエレガントなワインになるが、熟し方にバラツキがあり、収穫時にはケアが必要。ビエルソでは、Estaladiñaと区別がつきにくい。
"興味深い酸味を持つ品種で、スムーズかつデリケート、エレガント。他の品種と全く異なる。"

 

Estaladiña(黒ブドウ、DOビエルソ認定品種)
”Pan y Carne(パンと肉)"という通称もある。
Prieto Picudoに関連しているが、全く新しい品種。葉がメレンサオに似ているので、間違えられることがある。
1つの認定クローンがある。
樹勢が強く、それほど大きくない、濃い房をたくさんつける。レオンやビエルソなどでしっかり完熟するが、バリャドリードでもよく育つだろう。
"大きな可能性、スパイシーさ、表現のある、大砲のような驚くべき品種"

 

Mandón(黒ブドウ、DOアリベス)
Garroとシノニム。レバンテ地方やカタルーニャ地方にも存在し、市販されているワインがある。
生育サイクルは長く、生産性が高い。中くらいの房で、中~大きな実が成る。
輝きのある青みがかった色の実。
単一品種のワインとしても、酸の低い品種とのブレンドとしても機能するだろう。
"冷涼で、心地よいわずかな苦みがある。他の品種とのブレンドに適する。"

 

Gajo Arroba(黒ブドウ、DOアリベスの多くの畑に散見される)
ポルトガルのCornifestoとシノニム。
1つの認定クローンがある。
生産性の高い品種で、実は大きい。房は中~大で、皮は薄い。生育サイクルは中~長い。酸が際立っている。ブレンド品種としても単一品種としても適している。
"Tinto JeromoやBruñalとの相性が良く、フレッシュで、素朴なタッチが好まれる品種で、口当たりが柔らかく、喉ごしの良いワインに適している。"

 

Tinto Jeromo(黒ブドウ、DOアリベスの多くの畑に散見される)
全く新しい品種。4つの認定クローンがある。
生産性が高く、生育サイクルは長い。
房は大きく、実は中くらい。葉は立ち上がっている。高い酸と冷涼さが興味深い品種。ブレンド品種としても単一品種としても適している。過去には、その生産性が評価されていた可能性がある。栽培方法や栽培地域によって高い可能性があり、研究の余地がある。
"クラシックで、ミネラル感があるハイクオリティなワイン。高い酸がアルコールとバランスを良くし、フレッシュな味わいにしている。テンプラニーリョに共通する部分もあるが、より滑らかで複雑。"

 

Cenicienta(黒ブドウ、DOルエダにわずかに栽培される)
全く新しい品種で、絶滅危惧種。
1つの認定クローンがある。
自根畑に2,3株残っていたところを、現在200株まで増やした。
毛があるので、風で揺れると灰色に見えることから、この名前がつけられた。
非常に未知で、近隣地域の他の品種と色やストラクチャーが異なるため、現在OEVVで調査中。
"それほど高くはないがグリーンやミントの香りがあり、滑らかで、この地域が必要としているフレッシュさを持っている。現在輸入品種が栽培されている地域だが、この品種をもっと調査すべき。"

 

 


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