マロラクティック発酵と頭痛の関係
2016/11/22
一次発酵が終わって出来上がったワインにマロラクティック発酵を始動させる時期がやってきました。マロラクティック発酵とは、ワインに含まれるリンゴ酸を乳酸に変えて、二酸化炭素を放出するプロセスのことです。このプロセスを経ることで、ワインは、よりまろやかな味わいになります。大部分の赤ワインと一部の白ワインに行います。
人為的な介入をしないワイナリーでは、春になって気温が上がり、自然にマロラクティック発酵が始まるのを待つところもありますが、仕込みのときに亜硫酸を添加したとしても、一次発酵が完了するときには遊離亜硫酸の濃度がほぼゼロにまで減っているので、酢酸菌がついてしまうと、あっという間に酢になってしまいます。他の雑菌が繁殖する心配もあります。
そして、マロラクティック発酵がまったく起こらなくなってしまうリスクがあるので、もうこの時期に亜硫酸を追加することはできないのです。
マロラクティック発酵を行うのは乳酸菌で、ブドウ畑やブドウの果皮に自然と住み着いています。ところが、ワインになる前のブドウ果汁は糖度も酸度も高く、微生物には厳しい環境なため、乳酸菌の個体数は減ります。
ブドウの糖分が酵母の働きによってアルコールに変化する一次発酵(アルコール発酵)が終わり、温度が上がれば、少数生き残った乳酸菌が個体数を増やし初め、マロラクティック発酵を始動させます。
ワインにとって重要な乳酸菌は、次の4つ。
1.オエノコッカス属
2.ラクトバチルス属
3.ベディオコッカス属
4.リューコノストック属
乳酸菌の個体数が増える条件は、pHが高い(アルカリ性に傾く)こと、ワインに含まれる栄養分、温度、どのタイプの乳酸菌が存在するか、などです。pHが3.5を超えるとマロラクティック発酵が進行する速度が早くなり、ベディコッカス属とラクトバチルス属の乳酸菌が働きやすくなります。そうすると、チーズやバターのような乳製品の香りが過剰になり、ワインにとっては、不快な風味につながります。またラクトバチルス属の乳酸菌は、ワイン中のフェノール類と結合すると強い苦みを生じるアクロレインという物質を生成します。
一番やっかいなのは、これらの乳酸菌が、ヒスタミンなどの生体アミン(腐敗アミン)を生成し、これが吐き気や頭痛などの症状を引き起こすことです。
これが、(マロラクティック発酵をしない)白ワインは飲めるけれど、赤ワインを飲むと頭痛がするという方の原因になっている可能性があります。
ところが、乳酸菌の中でもオエノコッカス属の変種には、生体アミンを生成する酵素を持たず、低pHでもマロラクティック発酵を始動するものがあり、現在では、その乳酸菌を培養して冷凍したものや、フリーズドライしたものが販売されています。
つまり、雑菌が繁殖しない最低限の亜硫酸を添加し、一次発酵完了後、オエノコッカス属の乳酸菌を添加してマロラクティック発酵させた赤ワインは、生体アミンを分解しにくい体質の方でも、安心して楽しんで頂けるのです。
そんな赤ワインのひとつが、Quinta Esenciaのソフロスやシルボン、そしてアル-ナビス。
テンプラニーリョ特有の豊かな風味でエレガントな味わいのワインに仕上がっています。
日本にも入荷しています。見かけたら、ぜひぜひお試しください。
輸入元:ウミネコ醸造株式会社