トマス・ポスティゴ ワイン会
D.O.リベラ・デル・ドゥエロで最も重要な醸造家の一人、トマス・ポスティゴ氏を囲んでのワイン会がありました。 トマス・ポスティゴ氏は、リベラ・デル・ドゥエロで初めて樽熟成したワインをプロトス社で作り、パゴ・デ・カラオベハス社の創立に尽力し、リベラ・デル・ドゥエロで初めて(スペインでは2番目)、ワイナリーにOVIを導入し、動力ポンプを使わず、重力だけでブドウや果汁の移動を可能にしました。
現在は独立し、自らのワイナリー「トマス・ポスティゴ」で、12ヶ月樽熟成した赤ワインと、7ヶ月樽熟成した白ワインの2種類を作っています。
自社畑は持たず、醸造家として活躍した経験と人脈を生かして、良質なブドウを購入し、ワインを作ります。
D.O.ルエダのベルデホ100%を使った白ワイン。12時間、コールドマセレーションの後、水平プレスで果汁をとります。225リットルの樽で発酵させ、同じ樽で、毎日バトナージュしながら、7ヶ月シュールリーしています。(酵母の残りとともに、棒でかき混ぜながら、ワインを熟成させる方法)その後、2年間、瓶内熟成。
白ワインの方が、赤ワインよりも収穫の善し悪しにワインの品質が左右されるため、思ったような品質のブドウが採れない場合は、この白ワインは作りません。例えば、ファーストビンテージの2008年から2011年までは毎年作りましたが、2012年はあまりにも雨が少なく適当な酸に恵まれませんでした。2013年は逆に年間を通して気温が上がらず、十分な糖に恵まれず、カビ関係の病害もあったので、2012年、2013年はワインを作っていません。
興味深いことに、2014年からは、ブドウの40%を垂直プレス、残りは全房で発酵したもののフリーラン果汁を使って、醸造するスタイルに変更するそうです。生産量は、約半分になってしまうそうですが、価格はそれほど変更がないということなので、数年後がまた楽しみです。
この日は、2010と2011を飲みました。ブドウのキャラクターの違いと、1年間の差で、色はずいぶん2010の方が濃い黄金色でした。トマス・ポスティーゴでは、野生酵母のみを使用しているため、ベルデホにありがちなバナナや強いトロピカルフルーツの香りはありません。あのトロピカルフルーツの香りは、どこのワイナリーでも、同じ工業生産品の酵母を使っているからだそうです。
味わいに影響があるということでベントナイトは使わずに、アイシングラス(魚ゼラチン)を使って清澄しています。
トマス・ポスティーゴは、ヘーゼルナッツアーモンドを中心にフルーツの香りがあります。味わいはオイリーで、コクがあり、合わせるお料理は赤ワインと同じように考えて大丈夫だと思います。作りの良いワインは、樽を通しているかいないかに関わらず、瓶内熟成が面白いですね。
テンプラニーリョを中心にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローをわずかにブレンドし、12ヶ月樽熟成した赤ワインです。畑で、完熟していないもの、病害が見られるものはもちろん外され、一房が大きすぎるものも選別から外れます。一箱12Kgまでの小さな箱に入れられてワイナリーに到着し、選別テーブルでさらに房ごとで選り分けられ、除梗機で実だけを取り、マセレーション+一次発酵に入ります。ブドウの粒を破損しない、カーボニックマセレーション(二酸化炭素を追加するのではなく、発酵の過程で自然に発生する二酸化炭素を利用)で、フルーティさを引き出します。
テンプラニーリョでワインの基本とフルーティさを、追加するカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローでテンプラニーリョだけでは足りない酸と複雑味をプラスします。
熟成に使う樽は、毎年12月にフランスの生産者のところまで醸造家自らが出かけて買い付けをします。コルクの選別に関しても同様。使用する生産者を毎年、厳しいチェックで選択します。
ブレンドの方法や、樽とコルクを現地で購入するやり方などは、トマス・ポスティゴ氏が創立したパゴ・デ・カラオベハスで現在も引き継がれています。
ブドウに関しては、テンプラニーリョの良い生産者はいるものの、カベルネ・ソーヴィニヨンは熟すのに時間がかかるため、良い状態で完熟したブドウを入手するのが難しく、苦労しているので、とうとう自社畑を購入し、新たに植樹したそうです。
今でも十分、美味しいのですが、10年後、20年後がもっと楽しみなワイナリーですね。