スペインワイン BUDO YA

スペインにあるワイン専門店BUDO YAです。ワイナリー観光、クオリティワインのご紹介、ワイン関連の通訳・翻訳などを承っております。

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ミゲル・デ・セルバンテス大学 ワイン夏期講座3日め

ワイン夏期講座、最終日のまとめです。

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「ワインと音楽」というタイトルで話をしてくれたのは、D.O.トロのLiberalia Enológicaのオーナー、フアン・アントニオ・フェルナンデス氏と、D.O.リベラ・デル・ドゥエロのBodegas Neo、ハビエル・アセンホ氏です。

Liberaliaでは、ワイン熟成室には静かにクラシック音楽が流れています。オーナー自身もバイオリンやピアノを弾く音楽家でもあり、定期的にコンサートも開いています。Liberalia Unoという名前の、デザート白ワインのラベルも楽器モチーフにしたもの。

「ワインとクラシック音楽はよく似ていて、誰の身近にも存在し、身近なものなのに何故か「よく分からないから」と敬遠する人もいる。作り方や楽しみ方を理解すればするほど、より深く味わえるけれども、難しいことを言わなくても別に構わない。それぞれの立ち位置で楽しめば良いものだ。」

一方、Bodegas Neo の音楽とワインの取り組みは、もう一歩踏み込んでいて、ハビエル・アセンホ氏は、毎年8月13日から16日くらいにブルゴス県で開催されるロックフェスティバル「SONORAMA」の主催者の一人です。 ロックフェスティバルにはめずらしく、ビールやカクテルだけでなく、ワインがたくさん飲めるフェスティバルだそうで、実際、ワインがよく売れるそうです。「ワインは格好良い」、そんなイメージを作っていきたいそうです。ワイナリーには、プロのバンドも利用する、スタジオがあります。

Bodegas Neoでは、最小注文数はありますが、お客様のニーズに合わせてブレンドを変えるという、めずらしい商品もあります。マリアノ・ガルシア氏の甥であるイサック・フェルナンデス・モンタニャ氏が醸造家として働いています。

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ワイナリー観光の話です。左から、Abadia Retuertaの社長エンリケ・バレロ氏。中央が、Arzuaga Navarroのイグナシオ・アルスアガ氏です。

Abadia Retuertaは、12世紀の修道院を改装した、リッチな5つ星ホテルと、サン・セバスチャンのミシュラン三つ星レストラン、ムガリッツ監修のレストランを備え、質の高いグルメをプラスした優雅なワイン観光を提案します。ベーシックなプランも30ユーロとやや高めですが、1名様から参加でき、グループ別にガイドしてくれます。四駆に乗って広大な畑をまわり、修道院と醸造設備を見学し、最後に2種類のワインを試飲します。ヘリコプターによる見学コース、馬による見学コース、1週間滞在コースなど、幅広いプランがあります。

Arzuaga Navarroは、ワイナリーに併設されたホテルを作り、しっかりしたワイナリー観光を始めたパイオニアです。現在では、ワインを原材料としたコスメティック商品も展開し、ホテルで、ワインセラピーも行っています。 健康をプラスしたワイン観光を提案していきたいそうです。ベーシックなプランは、5ユーロで、醸造設備の見学と1種類のワイン試飲ができます。

どちらのワイナリーも、ブドウの収穫体験ができます。スペインだけでなく、国外からの参加者も多い、人気のプランです。

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「スペインワインを変えた人たち」というタイトルで話してくれたのは、左からVega Siciliaの醸造家ハビエル・アウサス氏、次がバリャドリッド地方紙でワイン記事を担当しているハビエル・ペレス・アンドレス氏。その隣がAbadia Retuertaの醸造家アンヘル・アノシバル氏。一番右がBodega Viña Pedrosaのホセ・マヌエル・ペレス氏です。

Vega Siciliaは、今年創立150周年を迎えました。1990年から当時醸造責任者であったマリアノ・ガルシア氏と一緒に働き始めたハビエル・アウサス氏によると、既に完成されている伝統を守りつつ、気候の変化に対峙しながら、ゆっくりと進化していくのがベガ・シシリアで、21世紀にどうありたいかというプランは全て予定済みだそうです。

新しい取り組みは、テンポ・ベガ・シシリアグループとして、新しいワイナリーを設立することで実現させます。例えば、エレガントでモダンなリベラ・デル・ドゥエロのワインを作るためにアリオン、伝統的であり、かつモダンなリオハのワインを作るためにマカン、などです。

Abadia Retuertaのアンヘル・アノシバル氏は、経済的に豊かではないブドウ栽培農家に生まれ育ったので、14才から畑で働いたそうです。1990年代には、フランスでワイン醸造の仕事をし、そこで当時スペインにはなかった栽培や醸造に関する知識を学びました。 1996年にAbadia Retuertaが創立されたときもその知識と、リベラ・デル・ドゥエロの原産地呼称に認められる地域からはずれるという特徴を最大限に生かして、土壌や気候別に畑を区切り、(リベラ・デル・ドゥエロでは認定されないけれども)最適と判断される品種を植えました。

中には、適合しなかった品種もあるし、適合した品種の中でもクローン樹を選別して、より良い畑にしていくそうです。

ワインの味わいの流行について質問されると、暑い年はしっかりしたワインが出来るし、冷夏なら酸の強いフルーティなワインが出来る。それがワインの個性であり、ブドウを病気にさせないよう、剪定を工夫したりはするけれども、わざわざ熟す前の青い実を混ぜたりはしない。流行は常に変わるのだから、それを追うよりも、Abadia Retuertaの個性を追求したい、ということでした。

Bodegas Viña Pedrosaのホセ・マヌエル・ペレス氏は、もともとブドウ栽培農家だったところからスタートしたワイナリーが、国際的にも高い評価を受けるまでに成長したのは、ブドウと気候に恵まれたことが一番だと言います。それをワインに最大限に発揮するために、各プロセスを丁寧に行うこと、責任を果たせば結果はついてくるそうです。ホセ・マヌエル・ペレス氏も、ワインの流行に無理についていく必要はないという考えで、バランスの良い味わいを目指していく、ということでした。

今回のワイナリーは、3つも大御所。流行を追うことは、パーカーポイントに一喜一憂するような馬鹿げたことだというのが一致した意見でした。が、いわば名前だけでワインが売れるようなところですので、小規模で知名度を上げてきているようなワイナリーの話も聞いてみたいと思いました。

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最後は、カスティーリャ・イ・レオン地方の原産地呼称委員会の座談会。 左から、リベラ・デル・ドゥエロのエンリケ・パスクアル氏。次がルエダのパブロ・デル・ビジャール氏。そしてビエルソのミセリコルディア・ベジョ氏。トロのアマンシオ・モヤノ氏、右から2番目がシガレスのパスクアル・エレラ氏です。

認定のための規則が厳しすぎる、原産地呼称にそもそも意味があるのか、など何かと批判されている原産地呼称委員会ですが、それぞれの地域のワインの認知度を高め、販売量を増やすためにどんな取り組みをしているかを話してくれました。

ワインに限らず国内消費が非常に落ち込んでいるため、国外への輸出を増やしたいというのが一致した意見。フランスのワイン平均価格は4.5ユーロ/リットル、イタリアは3.5ユーロ/リットルの中、スペインは1.45ユーロ/リットル。十分、価格で対抗できるはずですが、スペインワインの最大輸出先は、フランスとイタリア。オリーブオイル同様、ワインも液体はスペイン製なのに、国外に出るとフランス製やイタリア製として売られているわけです。

そして、ヨーロッパに出ると、スペインワインとして、ベガ・シシリア以外はワイナリー名で知られているところはほとんどないというのが最大の課題。

原産地呼称として、知名度を高めていくためにも、ワインの品質を守り、一定のイメージ作りのためにもブドウ品種や醸造方法はある程度限定が必要と訴えるのは、D.O.トロ。テンプラニーリョの原種とも言われるティンタ・デ・トロを擁す、フルボディの赤ワインで知られる狭い地域の原産地呼称ですので、イメージを大切にしたいという考えはよく分かります。

それ以外の地域は、複雑なノルマを単純化したり、ワイナリーから変更希望のある規則については前向きに検討していきたいそうです。

いろいろ頑張っているなと感じたのは、D.O.ルエダ。原産地呼称がスポンサーのプロバスケットボールチームもありますし、音楽祭も開催しています。ワイン祭りでは、白ワインが無料で飲み放題というのはなかなかありません。例えば、生ハムを誰かに勧めたときに「よく分からないから」という理由で断られることはありません。好き嫌いはあるけれども、「ワインはよく分からないから」と手を出さない層に、とりあえずワインを飲んでみてほしいためだそうです。

ちなみにルエダでは、シャルドネやアルバリーニョの栽培にも挑戦してみたことがあるそうですが、ベルデホやソーヴィニヨン・ブランほどの、この地域ならではという個性には繋がらなかったそうです。

また、聴衆から、「スペイン各地でロックフェスティバルや、各種イベントがあるのだから、イベント会社とタイアップして、コミッションをとってワインを置いてもらい、販売してもらうと良いのではないか。イベントで、ワインが飲めるところは滅多にない。そこから改善した方が良い。」という意見もありました。

ソムリエがいるような、高級レストランならともかく、普通のBARでは全くワインの知識がない人が働いていることもよくあります。飲食業界に携わる人向けの、無料一日ワイン講座をもっと頻繁に開催するのも良いかもしれないと思いました。ちなみに、この3日間のワイン夏期講座は無料でしたが、ほとんど一般に宣伝してないため、ワイナリー関係者ですら、この夏期講座の存在を知らなかったりします。

予算が限られた中でも、ソーシャルネットワークの活用、大学や各種イベントでの宣伝、など出来ることはたくさんありそうです。

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D.O.トロのLiberaria。Uno, Dos, Tres...とスペイン語の数字がワイン名になっています。

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キャラメリゼされた生パイナップルと、焼いたキノコにアリオリソースがかかったタパス。大きさも形も食べやすく、甘さと酸味、辛みの組み合わせが美味しかったです。

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グラスまではこだわってくれないので、白ワイン向きのグラスで赤ワインをもらったのですが、近くにいた人が大きなグラスに入れて、わざわざ持ってきてくれました。「東洋人は鼻が小さいから、小さいグラスでも匂いをかげるかもしれないけど、スペイン人は小さなグラスでは鼻が入らないんだよ。だから、特に香りを楽しむ赤ワインは大きなグラスで飲むのさ。」と笑っていました。一理あるような気もしますが、鼻の低さはおいておいて、グラスの形状でワインの味わいが大きく変わるのは確かです。


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