LZ 2011
1994年にパブロ・エグスキサとテルモ・ロドリゲスが立ち上げた「ラ・コンパニア・デ・ビノス・デ・テルモ・ロドリゲス」のD.O.C.リオハのワインです。パブロはシャトー・ペトリュスやドミナス・エステートでも活躍した才能ある醸造家。テルモは、リオハの老舗ワイナリー、レメュリを所有する裕福な家に生まれながらも、独立し、自分の信念を貫く醸造家。
彼らが最初に作ったワインは、ナバーラ地方の古い株仕立てのガルナチャから作った”Alma(魂)”でした。アルマは、ブドウの買い取り価格など地元の農業協同組合との信頼関係が上手く築けず、ワインそのものの評価は高かったにも関わらず、残念ながらプロジェクトとしては続きませんでした。
しかしその後二人は、ガリシア州バルデオラスのような、長い間忘れ去られていた小さな、しかし数千年もの間、ブドウを栽培し続けていた歴史ある地域で、その地方独特の土着品種を再生させ、素晴らしいワインを作り出して見せました。彼らがこだわったのは、土着品種を使うことと、土壌や気候に最大の敬意を払うこと。ボルドー大学で学んだ二人ですが、フランス流をマネするのではなく、スペインの伝統的なやり方に上手く取り入れることを選びました。
そして彼らが作るワインやその産地は話題になり、彼らのワインだけでなく、スペインワイン全体の可能性に世界中が注目することになり、スペインの土着品種が再評価され、その再生運動に繋がっていきます。
ラ・コンパニア・デ・ビノス・デ・テルモ・ロドリゲスが現在ワインを作っている産地は以下のとおりです。
http://www.telmorodriguez.com/index.php/es/zonas
国際マーケットを念頭に置いた価格設定やラベルデザイン、イギリスに於けるマークス&スペンサーのような仲介業者を特定する経営方針も見事です。
今回飲んだのは、D.O.C.リオハのLZ。リオハ・アラベサ地方のランシエゴ・デ・アラバ村で作られています。伝統的な方法で栽培された、株仕立てだけの畑から採れる、テンプラニーリョ種、ガルナチャ種とグラシアーノ種がブレンドされています。野生酵母のみ使用。セメントタンクで発酵させ、その後4~6ヶ月セメントタンクで熟成させています。一般的なステンレスタンク発酵や樽熟成という方法はとっていません。
色合いは、縁取りがややピンク系の落ち着いた印象の赤。最初はバルサミコやトリュフなどのキノコの香りがしました。ほんのりと上品なアロマです。時間とともに赤い爽やかな果実や、甘く熟した黒い果実の香りも感じました。第一印象では、エッジの効いた軽いワインだなと思いましたが、その粘性の高さが暗示していたようにゆっくりと味わいが開いていきます。甘みは少なめで辛口のワインです。フルーティな酸味が効いているので、どんな食事にも合うと思います。後口もフルーティで、わずかな苦みが印象をひきしめます。
ストラクチャーがとてもしっかりしているので、香りや味わいの変化が楽しめました。本来フルボディのワインが難なく出来るポテンシャルのブドウを軽々と仕上げているところに、テルモ・ロドリゲスの手腕を感じます。テンプラニーリョ種にガルナチャ種やグラシアーノ種をブレンドすることで味わいに奥行きが出ており、この価格帯としては、非常にお勧めできる一本です。軽いおつまみと、このワインだけでも十分ご満足いただけるのではないかと思います。