ペニンガイド優秀ワイン会
10月10日マドリッドに、ペニンガイドというスペインワインのガイドブックで93点以上を獲得したワインがスペイン各地から集まりました。昨年までと会場が変わり、鉄道博物館で開催されました。期間が2日から1日に短縮されたので、朝から晩まで試飲してきました。161ワイナリーが参加し、400種類のワインが出展されました。1万種類以上のワインをスタッフが原産地に出向いて試飲した中から選ばれた優秀なワインばかり。
点数の付け方や、ワインに点数をつけることそのものに対して賛否は両論ですが、これまで無名だった小さな産地や、生産量が少ないながらも素晴らしい品質のワインを作っていたワイナリー、誰にも知られていなかった固有品種などを世間に注目させた功績は大きなものです。そして、一般の人に、ワインテイスティングの楽しみを広めたという意味でも、ペニンガイドの功績は評価されるべきものです。
今年のベストワインにノミネートされたのは、VT Castilla y LeonのSietejuntos Syrah 2011(Bodega Micro Wines)、D.O.ValdeorrasのSorte O Soro 2011(Rafael Palacios)、酒精強化のテーブルワインのLa Bota de Florpower nº 44 2010 (Equipo Navazoz)、テネリフェ北部のテーブルワインのTáganan Parcela Margaelagua 2012。
品種やテロワールの特徴が出ていて、特に素晴らしいとされるワインが選ばれました。ベストワインに輝いたのは、ゴデジョ種の可能性をテロワールの特徴を持って引き出し、繊細で綿密な光沢感のある最高の白ワイン、Sorte O Soroに輝きました。スペイン白ワインの中でもとても作りの良い、As Sortesの流れを汲んでおり、これがファーストビンテージです。500リットルのフレンチオーク樽で発酵し、8ヶ月シュールリー樽熟成。醸造家は、Cecilia Fernández Rodríguezさんです。
ベストワイナリーにノミネートされたのは、Artadi、Descendientes J.Palacios、Barbadillo、Viñedos de Sierra Cantabriaです。最終的にベストワイナリーに輝いたのは、リオハのArtadi。今ではすっかり大御所ですが、元々はブドウ農家の協同組合から始まり、国外でも通用するクオリティの高いワイン作りを続け、現在ではオーガニック、ビオディナミ農法を用い、丁寧なブドウ栽培、誠実なワイン作りをすることで、リオハ随一の評価を獲得しています。
その他、印象に残ったワインをご紹介します。
D.O.Tierra de LeonのLeyenda del Paramo。 右側のブドウが、この地域の固有品種プリエト・ピクド。長細いブドウの粒が特徴です。豊富な酸と糖、粒が小さめなのでタンニンも豊かな注目の品種。このブドウのフリーラン果汁で作られたロゼワインは、明るいイチゴ系の香りながら、きりっと辛口。ふくよかで余韻も長いです。
言わずと知れたVega Siciliaのハビエル氏。D.O.トロのピンティア、D.O.リベラ・デル・ドゥエロのアリオン、D.O.リオハのマカンを試飲しました。同じテンプラニーリョ種で、同じファミリーが作っても、テロワールが異なるため、それぞれに個性がでます。ワインは、畑から始まるということがよく分かります。
ベガ・シシリア社のブドウ畑。葉をとる意味をハビエル氏に直接確認したところ、日照条件を良くするというよりも、風通しを良くして、カビや腐敗を防ぐためというのが一番の目的だそうです。ベガ・シシリア社がプリエト・ピクドでワイナリーを作ろうとしている、という話もどこからか流れた噂で、本当のことではないそうです。
りんごのシドラで有名なアストゥリアスで、素晴らしく個性的なスティルワインを作り上げて見せたDominio del Urgalloのニコラス氏。
ワイン作りに長けた友人同士で立ち上げた新しいプロジェクト。A+WINES。このワインは、シャルドネ中心のエレガントな白。アルコール度数が15°もあるようには思えませんでした。
D.O.バルデオラスのPezas da Portela(Valdesil)。ゴデジョ種100%の樽熟成をした白ワインです。ベルデホの樽熟成は重くなりがちですが、ゴデジョの樽熟成は複雑味が加わり、余韻が長くなりますが、決して重くならないのが特徴のような気がします。
D.O.リベイロのArman Finca Os Loureiros 2011(Casal de Arman)はトレイシャドゥラ100%。 Coto de Gomariz 2012(Coto de Gomariz)は、リベイロ地方特有の混合栽培畑。トレイシャドゥラ、ゴデジョ、アルバリーニョ、トウレイロ、ラド使用。大衆的で飲みやすいリベイロだけでない、めずらしい固有品種を使用し、独特のテロワールを生かしたワイン作りが急激に進化しているような気がします。
セゴビア県で樹齢200年を超えるベルデホ種を所有しているOSSIAN。今年6月から、Pago de Carraovejasの傘下に入りました。
カスティージャ・イ・レオン地方のセゴビア県、ブルゴス県、ソリア県に気に入った畑を見つけ、スペイン随一と呼ばれるビオディナミ農法の知識の経験を生かして、ジェローム氏が作るガリアです。テンプラニーリョ種を主体に、ガルナチャ種がブレンドされています。若干25才のときにピーター・シセック氏直々にQuinta Sardoniaを任され、現在もPingusの畑管理を担当しています。余韻がとても長く、飲み干した後にしばらくガリアの思い出が広がります。
ブルゴス県レルマにあるSabinares。D.O.アルランサで、4人のプロフェッショナルが、ほとんど廃畑になっていた、しかし可能性を秘めた標高1000メートルのところにあるブドウ畑を再生させて作ったプロジェクトです。小さな小さなワイナリーですが、それだけに自由に試せることは試してみているという感じの、元気いっぱいのところでした。
D.O.メントリダ、トレド県にあるBodega Jimenes Landi。言わずと知れた、ガルナチャ種の魔術師。ブドウを除梗せず、全房でマセレーションし、一次発酵するにも関わらず、その味わいに種や茎から出るであろう青臭さはまったくありません。あくまで軽やかなのに、本当に繊細なのに、緩やかに飲む人を虜にしていく深い味わいがあります。秘密を聞いたら、「お茶と同じだよ。」 かなりぎりぎりの低い温度で発酵をさせるそうです。
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そういえば、お湯で出した緑茶は苦みがあり、置いておくとすぐに色も味も変質してしまうけれど、冷たい水で一晩かけてゆっくり出した緑茶は甘みがあって、渋みはほとんどなく、色も味もしばらくそのままですね!
個人的にお人柄が大好きなD.O.CavaのCastell Sant Antoni。大量生産のCavaにはない、柔らかな、作り手の愛情が伝わってくるワインです。「年々すばらしい進化を遂げるテロワールにて私たちは、最大限の思いやりと配慮をもって、ブドウを育てています。 プロフェショナルである意識と、忍耐と、経験。 努力と苦心の積み重ねがあってこそ、すばらしいワインができあがるのです。 Pere Canals (Castell Sant Antoni) 輸入元Vino con vinoより引用」
その他のワイナリーです。