ソフロス・キンタ・エセンシア訪問
2016/07/31
サモラ県トロ村にあるソフロス・キンタ・エセンシア。とある試飲会で、卓越した味わいだと印象深かったので、ワイナリーを訪ねてみました。パゴ・デ・カラオベハスやジャケス・エ・フランソワ・ルルトン、バルトン・デ・レイなど錚々たるワイナリーで醸造を担当してきたラミロ(右)と、長い間伝統的な地下セラーでワイン作りをしていたフェリン(左)が、2006年からようやく自分たちのプロジェクトとして立ち上げたワイナリーです。
彼ら二人は、D.O.リベラ・デル・ドゥエロでも「アル・ナビス」というワインを作っています。D.O.トロのソフロスで使った樽を使用し、樽を感じすぎない、エレガントでモダンなリベラ・デル・ドゥエロのワインです。
ソフロスというのは、「夢」や「哲学」を意味します。長年にわたって、ワイン醸造と関わってきた二人は、「土壌」「気候」「情熱」の3つの要素が良質なワイン作りには欠かせないと語ります。
ブドウ畑は、ベガ・シシリアのピンティア社と、マリアノ・ガルシアのサン・ロマン社と隣接しています。標高700メートル。樹齢84年の、全て株仕立ての畑です。土壌は石灰分を多く含む砂質で、表面はごろごろとした石に覆われています。冬は寒く雨が降りがちで、夏は乾燥し極端に暑くなります。昼夜の気温差も激しい場所です。
一株から収穫するブドウは6房から8房にコントロールするため、冬季に枝を刈り込み、春に芽欠きをします。全て手作業です。ティンタ・デ・トロは恵まれた気候もあり、非常に高い糖度を持ちがちですが、この地域の古い樹齢のブドウは糖と酸、pHのバランスがとても良いそうです。
ワイナリーは借り物で、ステンレスタンクや熟成樽などは自分たちのものを置かせてもらって、ワイン作りをしています。 収穫は10月のはじめ。最大15キロまでの箱に手摘みで入れられたブドウは、25℃の保冷トラックでワイナリーに運ばれます。
その後、マイナス2℃から3℃の冷蔵庫にブドウを18時間保存します。そうすることによって、ブドウの粒がビー玉のように固くなり、除梗したときに実が傷つきにくくなります。
ブドウ畑の区画によって、4つのステンレスタンクに分けてコールド・マセレーションと一次発酵を行います。一次発酵のときには、入れたばかりのブドウは7℃ですが、発酵とともに熱を出すので、30℃まで上がってきます。そのとき自動的にステンレスタンクの周りに冷たい水が流れ、22℃まで下げることを30日から40日間繰り返しながらアルコール発酵させていきます。アロマや酸が失われることなく、ゆっくりと発酵します。
タンク上部に細く伸びているのがピストルになっていて、果汁と果皮をかき混ぜます。タンク内に隠れて見えませんが、4つの山形の羽がついていて、浮いていた果皮が下に押し込まれ、自然に果汁が上に上がる仕組みです。ポンプを使って果汁を上から流し込まないので、過剰な酸化が避けられます。
アルコール発酵が終わると、果汁を抜き、伝統的な木製のプレス機で残った果皮を軽くプレスします。 フリーラン果汁に対してプレス果汁は5%ほどです。
フレンチオーク新樽でマロラクティック発酵を1ヶ月ほど行います。この間、毎日、バトナージュします。マロラクティック発酵が終わると、一旦、ワインを抜き出し、粗い澱を濾します。そして、細かな澱(残りの酵母など)とともに15ヶ月ほど樽熟成します。1年に3、4回、澱引きをします。暑かった年のブドウはボリュームがありすぎるので、澱引きの回数を増やしたり、常に試飲とデータ分析をしながら、ワインと向き合います。無濾過でボトル詰めします。
ちなみに、ソフロスの樽は左から2列だけです。
外観は、青みがかった深い紫色。たっぷりとしたグリセリンがあります。ゆっくりと熟した果実が香ります。奥の方に樽由来のトーストや、甘いキャラメルのような香りがあります。味わいの第一印象は、柔らかな甘みのあるフルーティな軽やかさです。アルコール度数が15%もあるような強いワインにしては、とても飲みやすいことに驚きます。そしてもちろん、良質なテンプラニーリョ種特有のしっかりした骨格と厚みを持っていますので、口の中にだんだん広がる、よく溶け込んだタンニンの感じが心地よいです。とても生き生きとしたフルボディだと思います。