テソ・ラ・モンハ
エグレンファミリーが、ヌマンシアの後に同じトロ地区で2007年に設立したワイナリーです。樹齢25年から130年の、北向き、土壌は表面から大きな砂利、砂、粘土と深くなるにつれ細かくなる理想的なブドウ畑を100ヘクタール所有しています。労力やコストを厭わず、最高の品質を目指すワイン作りはヌマンシアと同じです。2013年ペニンガイドで最優秀ワイナリーに選ばれました。このワイナリーで作っている4銘柄中、Almirez 2010が94点、Victorino 2010が96点、Alabaster 2010が96点という輝かしい成績です。
Teso la Monja外観。古い修道院のような趣ですが、全くの新築だそうです。豊富な資金力。ヌマンシアと同じサモラ県バルデフィンハス村にあり、D.O.トロになります。
広いパティオを中心として、発酵室、樽熟成室とワイン熟成工程ごとに部屋がぐるっとつながっています。パティオの床に使っている石はすべてブドウ畑から持ってきて、手作業で埋め込んだのだそうです。壁もこの地域でとれた土を使っています。
自社の低温コンテナ。収穫してきたブドウを保存しておくのに使います。
このワイナリーでは、Teso la Monja、Alabaster、Victorino、Almirez、Romanticoという4つの銘柄を作っています。Teso la Monjaは、非常に特別な作り方をしていて、バイオダイナミック農法で管理される、樹齢130年1.8ヘクタールの畑から採れたブドウを使います。収穫量は1ヘクタールあたり、たったの700キロ。一般的なブドウ畑の10分の1くらいです。Alabasterは、通常の農法で管理された樹齢ももう少し若い畑から採れたブドウを使います。どちらも収穫は全て手摘み。除梗も全て手作業。マセラシオン、アルコール発酵の後、昔ながらの足踏みでドライアイスを入れて冷やしながらブドウを絞り、蛇口から出てきた液体をマロラクティック発酵の樽に運びます。
Victorino、Almirez、Romanticoは、手摘みされたブドウを除梗機にかけ、実だけをステンレスタンクでマセラシオン、アルコール発酵させます。Victorinoは、蓋のない低めのステンレスタンクで発酵させ、ブドウを適宜かき混ぜる作業を人力で行います。 Almirezは、かき混ぜる作業こそ人力ではないものの、蓋のないステンレスタンクでアルコール発酵を行います。Romanticoは蓋のあるステンレスタンクでごく一般的なアルコール発酵を行います。(このゾーンは撮影禁止でした。)
蓋をしないことで、適宜酸素にふれ、タンニン分が強く糖度の高い凝縮したブドウが繊細さ、エレガントさを兼ね備えるようになるのだそうです。
Teso la Monja用のマロラクティック発酵樽。卵形のフォルムで横からの圧力が少しずつ異なることと、上から足されるブドウ液で、中の液体分子が少しずつ動き、より良いマロラクティック発酵が期待できるのだそうです。
他銘柄のマロラクティック発酵樽と、扉の奥からが熟成樽。
澱引きのために空にした樽を68℃のお湯で洗っているところ。
澱引きは4ヶ月に1回程度行うそうです。樽は最大2年使います。
樽メーカー、畑の種類、銘柄、樽詰めした年月日などはしっかり管理されています。ボトル詰めや、ボトルを保存する倉庫は別棟にあるそうです。
窓はガラスではなく、アラバスター(雪花石膏)を使っています。直射日光を遮り、室温を一定にする効果があるそうですが、美術的な理由が一番のような気がします。ちなみにワインの名前、Alabasterはこの美しい石からとっています。
気品のある試飲ルーム。
スペインで一番高価とされるTeso la Monja。6月30日までの予約だと、約250ユーロほど割引してくれるそうです。ご興味がある方はご一報ください。2本用の箱にしては上下逆に入れるのかな?と質問すると、デパートやレストラン向けには、もう一本空瓶を入れるのだそうです。ショーケースには空瓶を飾ってもらい、中身が入った瓶はセラーでしっかり管理してもらうためなんだそうです。
アルミレス 2010。ティンタ・デ・トロ 100%。12ヶ月フレンチオーク(30%新樽、70%2年めの樽)で熟成。アルコール度数14.5℃ありますが、フルーティで爽やかな酸が感じられるので、重く感じませんでした。赤みのある深い紫色。グリセリンも強く、ワインの涙がしっかりとグラスに残ります。初めは、赤い果実の香りが華やかで、徐々にチョコレートやキャラメルなど樽由来の甘めの香りが立ち上がってきました。飲み口は厚め。トロのワインらしい、しっかりとしたフルボディ。タンニンも強く、飲み込んだ後の余韻の広がり方が素晴らしいと思いました。価格的にもバランスの良いワインだと思います。
ビクトリノ 2009。ティンタ・デ・トロ100%。18ヶ月フレンチオーク新樽熟成。去年、ペニンガイドの試飲会では2010年ものを飲んだのですが、2009年ものは瓶内熟成が進んだせいか、一層まろやかになり、強さが華やかさに変化してきた感じでした。深く輝く紫色。グラスをゆするとゆっくりと甘みのある黒い果実のアロマが出てきました。次にバニラ、シナモン、ミネラル、皮など複雑な香りがしました。味わいはなめらかで厚みがあります。フルボディのとても強いワインですが、尖ったところがまるでなく、スムーズに味わえます。余韻は長く、深く、素晴らしいです。ただアルコール度数14.5℃あり、たっぷりとしているので、食事と合わせてゆっくりゆっくり味わうのが理想かなと思いました。ワイナリーの人は、食事が終わる頃が一番美味しくなっていることが多い、と言っていました。デキャンタすると、もっとエレガントな魅力も出てくるのではないかと思いました。
アラバスタ 2008。ティンタ・デ・トロ 100%。18ヶ月フレンチオーク新樽で熟成。とても伝統的な方法と、最新の発酵技術を駆使して作ったワインで、昨年のペニンガイドでもとても評判になりました。その時の試飲ノートには「濃い紫。香りが出るまでに時間がかかる。飲んだことのない感じ。とても濃厚。タンニンだけでない複雑さ。」とメモしてあります。今回の2008はハーフボトルを試飲させてもらいました。(写真を撮るのを忘れました。)
つややかな深い紫色。香りが高くなるまでにはやはり時間がかかりました。味わいは、2008年もののハーフボトルのせいか、ペニンガイドの試飲会のときとは違って、全体に軽めでした。去年は圧倒的な個性を感じたのですが、今回はやや大人しい上品なワインだなと思いました。もちろん複雑さのあるフルボディで、余韻も長く、素晴らしい味わいなのですが、「すごいワインだった」という思い込みがあったからかもしれません。
試飲のあと、おつまみに出てきたベジョタの生ハムがとっても美味しかったです。(笑)