フィンカ・ビリャクレセス
2013/03/19
リベラ・デル・ドゥエロのワイナリー、フィンカ・ビリャクレセスに行ってきました。 スペイン王室御用達ワインのベガ・シシリアの隣にあり、その昔はブドウをベガ・シシリア社に卸していたことで有名です。
10年以上前、ピーター・シセック氏が牽引するワイナリーを中心に、リベラ・デル・ドゥエロのいくつかのワイナリーは「スーパー・スパニッシュ」と呼ばれたのですが、フィンカ・ビリャクレセスはその中でも「最も優美なワイン」と評価されていました。当時、ちょうど日本はワインブーム。一部リーグのバリャドリッドサッカーチームに城 彰二選手が来たり、ユーロに加入して外貨が入り、スペイン経済はバブルへの道まっしぐら・・・の頃でした。
久しぶりに訪れてみると、当時のオーナー、ペドロ・クアドラド氏は、2000年にワイナリーをArte VinoというリオハのISADI、ORBEN、トロのVETUSのグループ会社に売っており、ここ数年、国を挙げて力を入れているワイナリー観光にもとても力を入れている、エレガントでモダンなワイナリーに様変わりしていました。でも樹齢が古く保護指定されている松林はそのままでした。この松林が、ブドウにとってとても危険な春先の霜や北風からブドウを守り、毎年良い収穫をもたらしてくれるそうです。
ちなみに写真の畑では実験的にピノノワール、シラー、プリエト・ピクードなどリベラ・デル・ドゥエロ産地統制委員会では認定されていないブドウを栽培しています。外来種がどんな風にここの土壌と気候で育つのかを主に観察しているそうです。
ブドウ選別テーブル。端に定間隔の棒が出ており、この棒の隙間から落ちる小さな実だけをワインに使います。サイズの大きな実は、皮と種に比較して果実の部分が多いということになり、つまりはタンニンやポリフェノールなど重要な成分が少なく、凝縮感の足りないワインになってしまう、ということで、この段階ではじきます。上に出ているホースからは風が送られ、あまりに軽いブドウもここではじかれる仕組みです。
選別されたブドウを粉砕します。
ブドウの実と茎部分を分ける除梗機。周囲の小さな穴に落ちた実だけを最終的にワインにします。カベルネなど、テンプラニーリョより小さな実を除梗するときは、さらに穴の小さなアタッチメントを変えて作業をするそうです。最終的には収穫してきたときのたった40%ほどが、ワイン作りに使われます。
一時発酵用のステンレスタンク。温度管理はもちろん万全。畑ごとにタンクを分け、発酵を管理します。コールドマセラシオンは約1週間。アルコール発酵が23℃から25℃で約3週間。下部が円錐形に細くなっていて、この部分に皮や種など固形物がたまります。モーターもついているので、伝統的なステンレスタンクのように、中に人が入って固形物を掻き出す作業が不要だそうです。元はフランスの技術で、ポルトガル製です。
ステンレス製のプレス機。一次発酵が終わった液体をここに入れ、空気圧で膨らませたタイヤで軽く一度だけ絞ります。残ったものは、蒸留酒を造る会社に売ります。
カベルネとメルローの一次発酵はフレンチオークの大樽で行われます。(テンプラニーリョはすべてステンレスタンクで一次発酵)一部、マロラクティック発酵もこの大樽で行われる場合もあるそうです。
蒸発してしまったワインを補うための、モスト貯蔵タンク。上部の蓋は液面にぴったりとなるまで下がる仕組みなので酸化しません。
樽熟成室。フレンチオーク100%で、3年を限度に使います。上から樽会社の名前、焼き入れの度合い、日付、ワイン銘柄、畑の名前(全て自社畑のブドウを使っていますが、場所や土壌ごとに畑を区切り、名前をつけて管理しています。)、日付などがメモされています。プルーノは12ヶ月、フィンカ・ビリャクレセスは18ヶ月の樽熟成を目安にしています。
マロラクティック発酵の樽。1ヶ月から1ヶ月半、ここも畑別に入れられた液体を醸造家がチェックしながら最適な時期を選びます。
ブドウの収穫が特に良かった年、最も古い樹齢のブドウだけから作る特別なワイン「Nebro」用の樽です。多い年でも6樽。普通は5樽で作るそうです。1樽あたり300ボトルがとれるそうですから、おおよその年間生産量は1500本ということになります。新樽のみを使うので、「天使の取り分(蒸発するワイン)」が多いそうです。
現在は、ルエダの契約ワイナリーで作っているベルデホ。
りんごや柑橘系のアロマがとても高く、緑がかった輝く黄色は若々しく、しっかりしたボディを想像したのですが、味わいはやや薄めかなという感じがしました。飲みやすい白ワインです。
リオハのテンプラニーリョ100%、14ヶ月フレンチオークとアメリカンオークで熟成させたクリアンサ2007。ボトル熟成期間が長いので、色合いはややレンガ色。甘いオーク由来のバニラ香と、熟した果実のアロマ。一番良い時期は過ぎたかな、という柔らかい味わいでした。
2010年ものはパーカーポイント94点を獲得し、一気に輸出が増えたという銘柄の2011年のプルーノ。つややかな紫色で、カシスや赤い果実のアロマが生き生きとしていました。タンニンもまだ非常に強く、あと1年くらいすればもっとバランスは良くなるかもしれないなと思いましたが、しっかりした酸が素晴らしく、ただ重いテンプラニーリョに終わらず、軽やかと見せてしっかりとしたボディを持っている魅力的な若いワインでした。コストパフォーマンスは素晴らしいと思います。
トロのフロール・デ・ベトゥス。テンプラニーリョ種100%。9ヶ月フレンチオークとアメリカンオークの新樽で熟成しています。トロ地区特有のボディのふくよかさはそのままに、果実の感じがしっかりと残った、タンニン由来の心地よい甘さも兼ね備えたバランスの良いワインだと思いました。色は濃い紫。香りは、赤い果実、オーク由来のチョコレートやキャラメルなどの甘い感じ、ミネラル、などいろんなニュアンスを感じ取ることができました。
試飲が終わったら、それぞれの地域のチーズと合わせてみます。
スペインには、「チーズをつまみに出すワイナリーではワインを買うな」という諺があります。美味しいチーズに合わせると、どんなワインも美味しく感じるからだそうです。確かに、チーズを食べながらワインを飲むと、格段に美味しくなりました。(笑)